「本塩沢」・・・別名「塩沢お召し」は、
新潟県南魚沼市、塩沢地方でつくられている絹織物です。
南魚沼といえば、コシヒカリの産地としても有名ですね。
一年の半分近くが雪で覆われる南魚沼地方は、
その雪解け水が美味しいお米を育てます。
雪で育ったのはお米だけではありません。
昔はこの雪のために春になるまで農作業ができず、
女性たちは冬の間にひたすら布を織り続けました。
そして、越後上布や塩沢お召しといった上質な織物が生まれたのです。
塩沢には4種類の織物があります。
「本塩沢(塩沢お召し)」
「越後上布」
「夏塩沢」
「塩沢紬」
中でもユネスコの無形文化遺産に指定されている
越後上布の歴史は古く、縄文時代まで遡ることができます。
越後上布は、苧麻(ちょま)とよばれる、
この地方に自生している麻からつくられ、
細かなシボが特徴の麻織物です。
塩沢お召しは、その越後上布の技法を取り入れ、
江戸時代中頃につくられはじめました。
とくに徳川十一代将軍家斉(いえなり)に愛用され、
お召し物にしたことで、「お召し」という名前がつけられました。
その材料は、繭から最初に取り出される生糸を用います。
そして経糸には、一メートルあたり三百五十回、
緯糸には千八百回もの撚りを掛け、
織りあげた後に湯もみをします。
この湯もみのときに、撚りの掛かった糸が戻ることによりシボができ、
シャリッとした風合いが生まれます。
また、蚊絣や十字絣といった緻密な絣文様が
この風合いを更に引き立てます。
シボのある生地は適度な張りがあり、
身に纏ったときには着崩れがなく、
心地よく体になじみます。
そのため、単衣仕立てにして
その風合いを楽しむことが多いようです。
着て心地よく、見た目にも涼やかで品のある塩沢お召しは
初夏を感じさせる日射しの下で軽やかに身に纏いたい着物です。