去年の年末、能登上布の工房見学に行ってきました(^^)
その時のレポートが繊維新聞という業界紙に載りました。
少し専門的ですが、興味のある方は御一読ください!!
「能登上布 織元山崎仁一を訪ねて」
能登半島の中ごろに、神話の時代からの歴史を持つ能登上布を織り続けている工房がある。
今回は幸運にも その織元山崎仁一さんを訪ねる機会に恵まれた。
もともとこの地域は麻の産地として始まり 近江上布の原糸の生産をしていた。
地元で良質の織物を作ろうとする気運が高まると、近江より技術者を招き技術を向上させ、
明治の終わり頃には能登上布という名前が定着するまでになる。
最盛期は昭和初期。織元は140軒を超え 年間生産量は40万反もあったという。
新潟を出てから5時間。辿り着いた工房は昔ながらの民家の中にあった。
ご主人と女将さんが笑顔で迎えてくださり さっそく工房の見学へ。
織元山崎さんでは 糸の染から織り上がりまでの全ての工程を工房内で行っている。
側道に面した入り口から入ると 一階には10台程の織機が並べてあり 6人の織子さんがリズム良く機を動かしている。織子さんは工房と出機を合わせて16名。年代も経験年数も様々だ。
最盛期には山崎さんだけでも 50〜60名の織子さんを抱えていたという。
今では能登上布の年間生産量は 着尺が400反(うち絣は30反程度)帯は150本のみとなっている。
若い女性が複雑な絣柄の女物着尺を織っていた。ある人の注文で 昔の染め見本から復刻させた柄は
染めるのに1ヶ月、織り上がりまで1ヵ月かっている。通常の無地の着尺は1週間程で織りあがるというので、いかに手の込んだものかが伺える。今工房内で細かな絣を織れるのは3名程。貴重な技術だ。
2階に上がると染めの工房になっていて、ここで糸染めや機にかける糸の準備をしていく。
能登上布の絣づけは独特である。
糸の束を糸でくくる防染方法は取らず、平たく並べた糸に染めをしていく捺染という技法を用いている。
男物の絣づけをするロール捺染、女物の絣付けをする櫛押捺染、今は行われなくなった板締め浸染
ロール捺染・・・筒状の木の側面に柄を掘り込み それに染料をつけ糸の上に転がし染色する。
繰り返しの柄の多い男性物の時に使われる。
櫛押捺染・・・・半楕円形の櫛型の道具を使い、ライン付けをしていく。
複雑な柄付けの多い女性物の時によく使われる。
これは近江上布でも見られる技法。
板締浸染・・・・昭和25年には途絶えていた技法。
板の間に糸を挟み万力で締め上げた状態で染液につける。
染めの部屋にも 若い職人さんの姿が見えた。
この頃は全国から上布をつくりたいという若者が集まってきているそうだ。
これからを支える力も着実に育ちつつあることに、部外者ではあるがうれしく思った。
糸を染める人、織る人の減少も問題だが、
糸の原料を育てる人、糸にする人、染や織の道具をつくる人、布が生み出される為に必要な技術が
ぽろぽろと失われていく、産地の問題は山積みだ。
そんな中技術を守り伝えている山崎さんは、本当に大変な努力をされている。
これからもずっと能登上布の歴史が絶ず続いていくことを心から願う。